こんばんは。住職です。
4月30日(日)午後3時より、安洞院しのぶ会館にて第2回となる「お香ブレンドワークショップ」が開催されました。2月に福島市仏教青年会の法話会にて開催したところ、休日に開催してほしいとのご要望も多くいただきましたので当院を会場に企画いたしました。
このプログラムは曹洞宗と東京のお香専門店・上信堂の協力で実現したプログラム。各地の被災地支援の一環として仮設住宅等で行われ、全国のお寺の奥様方の研修会ではそのノウハウやマニュアルが紹介され、パッケージ化され全国に普及しています。本来であれば門外不出の調合のレシピを惜しみなくご提供くださった上信堂の蔵立社長には本当に頭が下がる思いです。
私も一度、仙台のプログラムに取材と撮影で同行しましたが、作業をしながら自然と会話が弾み、特に「夜はいつも不安でしたが、香りのおかげで睡眠薬を飲まなくても眠れるようになった」と仰った方のコメントが印象的でした。
薬事法上「〜な効能があります」と宣伝できないものの、お香原料は本来大陸から鑑真和上らが伝えた漢方薬がそのルーツ。鎮静効果、芳香健胃、様々な効果があるといわれています。
今回はお香の歴史の座学から入り、飛鳥時代の仏教伝来から現代に至るまでを確認。日本古来の香りと思われているものは、実はほとんどが海外から輸入されたものです。平安貴族のミヤビな社会から、鎌倉時代の武家社会へ、室町の応仁の乱で荒廃した都で生まれた東山文化が花開き、江戸の町人文化の浸透まで、お香の歴史を知ることは日本人の歴史そのものでした。
まずはブレンドのレシピに則って進めて、匂い袋づくりから。
最初のベース3種類、次のベースを3種類、最後の仕上げ1種類で香りの特性を決めていくのですが、不思議なことに同じ分量で作っているのに5種類目あたりから香りにバラつきが出てくるのです。同じ分量でやるのに、一つとして同じ香りになることはない。無意識のさじ加減が働いているのかもしれませんね。
そして今回は可愛らしい袋を利用した文香(ふみこう:手紙などに入れて香りづけをするためのお香)も作りました。規定の分量のレシピの他に、住職オリジナルブレンド!その名も「スパルタンブレンド」(笑)。防虫香に近い配分ですが、甘みを抑えて辛味とシャープな印象で禅寺らしく仕上げました。香りの対比をしてみると、その特徴がよく分かるものです。
調合したお香は匂い袋以外にも、和紙に包んだり、布で閉じたりして文香にすることもできます。遊・中川さんでもハギレの布を使ったおしゃれな文香を出していたことがありました。ちょっとした工夫で、暮らしが楽しくなるのもお香の素晴らしさです。
子どもたちに体験させると、その感性や表現のしかたに個性があらわれて面白い。香りを表現するのは原体験でしかないので「おばあちゃんの家の玄関のにおい」とか「家の裏庭の畑のにおい」とか「歯医者さんの薬のにおい」というように、感情を言語化して一生懸命説明しようとします。原体験がなければ、言語化はできません。
最近は「無臭消臭」とばかりにどこでもいやな匂いを排除する風潮がありますから、無臭化している社会の中では原体験も必然的に減るような気がします。トイレは臭いものだし、生ゴミも臭いし、道端で死んでいる動物も臭い。そういう原体験を持たないと、人間の感覚は退化の一途を辿るばかりのような気がするのです。
第1回目のご縁から、色々なところにお声掛けいただいて、お香のワークショップをやる機会が多くなってきました。年配の方には記憶と手先を刺激することでの副次的効果もありそうですし、子供には豊かな情操教育と日本の伝統を伝えることができます。お香とは、本当に老若男女みなが幸せになれる先人の知恵ですね。宗教、特に仏教には香りにまつわる教えも多く、そうしたエピソードも適宜交えています。
第3回、この夏頃にはまた企画しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
早速ですが、ついさきほど新しい香原料(乳香や貝香など)も注文しました。新しいブレンドに挑戦し、清らかな香りをお届けできればと思います。蒸し暑くなる時期はスッキリした辛味のあるお香を玄関で薫きますが、そんな文香を忍ばせて暑中見舞いを送るというのも洒落ていますね。
それでは、このへんで。
本日ご参加の皆様、まことにありがとうございました!
住職 合掌
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