いい住職ダメな住職

今回は現場で仕事をしていて、少々ぶっちゃけた話題に言及しようと思います。

タイトルの通り、本当に色々な住職がいらっしゃると思う時があります。


当院では宗教宗派普問の民間霊園を運営していることもあり、墓の移動や改葬、新たに檀家に入る入檀やその逆の離檀の相談が日々寄せられています。その都度、書類のやりとりや事務処理をすることになりますが、その度に率直に思うところがあります。今でも忘れられない出来事は、まだ副住職になりたての20代半ば、今から10年以上前のことでした。


北海道のある寺院から墓を福島に移されて、当院へ入檀される方の対応をした際に、亡くなられた方々の移籍情報のほかに、菩提寺のご住職の肉筆の手紙が添えられていました。几帳面な性格は、その筆跡からじゅうぶんに伝わりました。


「(前略)・・・これまで北海道の当寺にてお預かりしていた●●霊位を貴院にお繋ぎいたします。ちょうど春の時節に亡くなられた●●様は野の花を愛され、私は法務の度に良寛さんのことば「花開くところに蝶来たり、蝶来るところに花開く」の一節をお話し申し上げておりました。おそらく●●様の命日の頃には福島でも幾らかの野の花が開く頃、どうか貴院におかれましても皆様が仏の光明と花の美しさに守られますよう、菩提寺の住職として云々・・・」という内容のものでした。




これは、医療の世界でいえばこれまでのカルテの病歴や投薬の情報にあたるものでしょう。こういった情報があると、受ける側としては非常に助かりますし、誠意をもって送り出した仏様を同じく誠意でお迎えする心がまえになるものです。しかし残念なことに、こうした紹介状は全てのご住職が行っているわけではないことが十数年の実務の中で分かってきました。法的なルールがあるわけではありませんし、医療のようにカルテがあるわけではないので、これは住職個人の裁量に任される領域になります。


出ていく檀家に関しては全くほったらかしの住職、最低限の事務情報だけは的確に渡して下さる住職、そして少数ですが心ある住職、中には親切すぎて熱すぎる住職。本当に様々な方がいらっしゃるのだなと思いながら、いざわが身に置き換えて考える時に思い浮かぶのは北海道のあの住職の手紙です。


コンプライアンスの観点から、不要な情報まで渡すのは個人情報を扱う宗教法人としてもちろんNGですが、北海道のご住職のように「真摯な供養の想いだけを伝えたい!」というお寺様の檀家をお預かりするということになると、こちらも真摯にお受けすることになります。


実際にあのような手紙を渡されたら、良寛さんの和歌については咀嚼して法話が出来るまで一通り勉強せねばなりませんでした。当時は大変でしたが、実にいい勉強の機会をいただいたと思っています。(私が法事で良寛さんの歌ばかり詠むのは、この案件のおかげです。昨日も今日も、良寛さんの歌でした!)


「墓じまい」にはじまる離檀や移動については、当院でも次のご住職への紹介状を誠意を持って手配いたします。誰もが幸せな仏事を営んで欲しいと願うのが、住職としての率直な想いです。もしも今後のことでお困りの方がいらっしゃれば、まずはご相談ください。


春の花が開いて、蝶々や蜂が境内に増える季節になりました。

北海道のご住職は、お元気でお過ごしでしょうか。


こういうテーマに関しては、特に寺院側からの賛否が分かれるところかと思いますが、率直なご感想や事例などありましたら、匿名でも構いませんのでコメント欄に一筆頂ければ嬉しいです。


住職 合掌


※離檀や入檀についてはその方法や費用等、各々の寺院規則等によって個別の条件が定められています。地域の慣習や寺院の流儀により大きく異なることもあります。

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