バンコク・クロントイスラムを歩く

タイのチェンマイツアーを終えた一行は、一路バンコクへ。これまでのんびりしていたチェンマイの空気とは一変し、次々と林立する高層ビルのネオンと渋滞を抜けてタイの首都バンコクに入りました。


こちらではシャンティ国際ボランティア会(以後、SVAと表記)の協力を得て、SVAが現地法人として立ち上げたシーカーアジア財団の事務所にて研修を受けました。教育支援や教育の機会に恵まれない子供達への奨学金支援を行っている財団の活動や実態についてのレクチャーを受け、事務所のあるバンコク最大のスラム街・クロントイスラムを歩きました。






事務所では、タイ北部チェンライ出身のアネーさんが日本語で詳しいレクチャーをしてくださいました。アネーさんは幼い頃、財団の支援により学生寮に住んだ経験から現在の仕事に従事することになり、現在は多くの見学者や学生らを迎えつつ、タイ各地の奨学金授与の事業などに従事され大変多忙な生活を送られています。


上智大学に1年間留学された経験から、日本語も得意とされています。「教育への感謝から、タイと日本をつなぐ架け橋になりたい。」そう仰っていました。12人のメンバーは2グループに分かれてクロントイスラムを歩くプログラムに出発しました。



このクロントイスラムには約10万人の人々が生活しています。古くは港湾労働者が住み着いて形成されていったスラムでしたが、近年はカンボジアやミャンマーから移住してきた人々も多く生活しています。シーカーアジア財団の事務所がある周辺はたくさんのNGOの事務所が集中しており、付近に建てられた学校からは子供達が元気に遊ぶ姿が見られます。スラムというと治安が悪く暗い雰囲気を想像しがちですが、ここクロントイスラムは比較的のんびりとした空気が流れていて、どこか終戦直後の日本のような忘れかけた温もりが感じられます。


これもお国柄なのでしょうか。すれ違う時もみな笑顔で「サワッディーカー(こんにちは)」と挨拶をしてくれました。時には後ろから走ってついてくる子供達、路地裏でゲームに興ずる若者たち、料理のいい匂いが家々から漂ってきていました。


政府の政策により、この数年のうちにクロントイスラムは解体され、住民は近隣に建てられる予定の25階建のアパートメントに移住させられる予定です。これには多数の問題があるようで、家を持っている者は移住の権利があっても間借りしている賃貸生活者は移住の権利がないことや、既に長年の生活で出来上がっているスラムの中のコミュニティが分断される恐れがあることなど、さまざまな懸念があります。あと数年で見られなくなってしまう、バンコク最大のスラムの光景は、普通のツアーではまず見ることのできない貴重な体験となりました。




スラムの各所には、たくさんの祠が祀られ、きれいなお供えも多数なされています。毎日の生活の中に手を合わせる時間を欠かさない、タイの人々の敬虔な宗教観が垣間見られますね。




スラムの見学から戻ると、財団の建物の図書館を訪問しました。ちょうど下校中の子供達が立ち寄っているところで、みな楽しみに来られているそうです。日本の絵本にタイ語の翻訳が掲載されたもの、タイ語の手作り絵本、中には移住者用のクメール語やミャンマー語の絵本もありました。


事務所で販売しているクラフト。スラムで用いられている防水シートを利用したバッグやポーチ、タイの花飾りをモチーフにしたピアスなど、オシャレなグッズが沢山販売されていました。日本のメディアや雑誌ブルータスなどでも紹介され、グッドデザイン賞も受賞されているとのことです。ブランド名は「FEEMUE」、日本人によりロゴデザインやブランドコンセプトが作られています。



事務所にて、アネーさんへ感謝の思いを込めて、参加者からのチャリティをお届けしました。これでまたひとつ、タイの子供達が教育を受ける機会を得ることができます。

そして、事務所の皆さんへ、安洞院からオリジナルの手ぬぐいを贈呈。アネーさんは早速首に巻いてディナーまでご一緒してくださいました。ブルーのシャツにブルーの手ぬぐいがとてもよく似合っていますね!



最後の出発前に記念撮影。

チェンマイのお祭りから始まり、エイズ患者の子供達の孤児院を訪問し、寺院めぐり、そして大都会の観光を経て、最後はスラムで活動する人々の想いに触れる。経済発展が目覚ましいタイですが、その光と影、生活している人々の本当のリアルな姿に触れることができる、素晴らしいツアーとなりました。


1回の旅行が、一人の人間の価値観や生き方を大きく変えることがあります。かくいう住職の私も難病の経験で死にかけてから寺の仕事に復帰し、これからの方向性を考えている時期にカンボジアの寺院で大きな刺激を受けて今に至ります。


寺院や宗教は触媒であること。たくさんの人々の想いがひとつになり、そのエネルギーが社会に何倍にも増幅されて必要とされている場所に届けられること。この理念の原点は、アジアの仏教寺院で学んだ大切な教えの一つです。今回のツアーもそうしたご縁から人と人が繋がり、多くのみなさまと道中共にすることができました。


ご参加いただいたみなさま、現地の関係各位には心より感謝申し上げます。

また必ず大勢で伺いますので、今後のご活動が末長く続きますように。

コップクンカー!(ありがとう)

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福島県福島市の曹洞宗寺院・安洞院のオウンドメディアです。ブログ記事とソーシャルメディアの投稿を中心に、お寺の各種法要やイベント告知・報告をアップしていきます。寺院の歴史沿革や詳細については公式サイト(http://antouin.com)を御覧ください。

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