春彼岸の3月22日、本堂前のしだれ桜が開花しました。推定樹齢380年、福島市の指定保存樹です。例年4月初旬の開花ですが、今年は暖冬のせいか彼岸期間中に開花、週末ということもあり多くの方が墓参の途中で足を止めていました。
安洞院の歴史は開山425年。寺の歴史を見守ってきた古木は今日も支えられながら生きています。しかし、東日本大震災後、思わぬ事態が発生します。
<写真・2006年>
この写真は2006年、今から14年前のものです。枝の生命力と花の数が格段に違います。
震災後に境内に全面除染が入り、この桜の木付近も表土5センチの土が除去されました。放射線量が目に見えて下がりましたが、結果、いくつかの古い樹木は生気を吸い取られたように衰弱してしまいました。気をつけてはいたものの、デリケートな根っこの周囲の作業の影響などにより、花の量は当時の3分の1ほどまで激減してしまいました。
たかが5センチ、されど5センチ。
人間が思っていた以上に、5センチの土には目に見えない生きる力が宿っていました。葉が土に還り、虫の死骸が朽ち果てて、鳥のふんが新しいタネを運んで来る。気の遠くなるような営みが宿る5センチの宇宙を、破壊してしまったのでしょう。浅はかなことでした。
<写真2019年4月>
以来、一度弱ってしまった桜ですが、なんとか細い枝を懸命に伸ばし、少しでも生きようと花を咲かせています。以前のような姿には戻りませんが、なんとか花の数も増えてきました。
<2020年3月22日撮影>
今年も力強く咲き始めています。安洞院のインスタグラムやツイッターなど、各種SNSを通じて画像をアップいたします。ぜひご覧ください。
ライトアップ等については、境内の樹木や動植物が静かに休めるよう配慮し一切行っておりません。人間の都合でこれ以上桜の古木を傷つけたくないというのが本心であります。朝日に照らされた桜の花、夕闇の中にほのかに風に揺れる枝、できるだけ自然の状態で見ていただきたいと考えています。
この様子ですと、今週末3/28〜29ごろには見頃を迎えることでしょう。
法要中などはお静かにご覧ください。
合掌
0コメント